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プロバイオティクス投与とVAP発生率~結果② [critical care]

Impact of the administration of probiotics on the incidence of ventilator-associated pneumonia: A meta-analysis of randomized controlled trials

Critical Care Medicine 2010年3月号より

VAP発生率
今回のメタ分析で検討した各種転帰をTable 2にまとめた。5編すべてでVAP発生率が報告されていた。統計学的に有意な異質性(heterogeneity)は認められなかった(p=0.06; I^2=39%)。プロバイオティクス群の方が対照群よりもVAP発生率が有意に低かった(患者総数689名;固定効果モデル:OR, 0.61; 95%CI, 0.41-0.91;変量効果モデル:OR, 0.55; 95%CI, 0.31-0.98)。各RCTにおけるVAP発生率のオッズ比および5編の統合オッズ比をFigure 2に示した。
サブグループ解析:1編のRCTを除いた残り4編についてのサブグループ解析を行ったところ、やはり対照群よりもプロバイオティクス群の方がVAP発生率が低いという結果が得られた(患者総数645名;固定効果モデル:OR, 0.62; 95%CI, 0.41-0.94;変量効果モデル:OR, 0.56; 95%CI, 0.30-1.06)。サブグループ解析にあたって除外した1編では、プロバイオティクス製剤が胃管から投与される代わりに口腔内に塗布されていた。同じプロバイオティクス製剤(Synbiotic 2000 FORTE)を使用した3編についてのサブグループ解析でも同様の結果が得られた(患者総数437名;固定効果モデル:OR, 0.44; 95%CI, 0.25-0.75;変量効果モデル:OR, 0.44; 95%CI, 0.24-0.79)。また、VAP発生率が非常に高かった1編を除外したサブグループ解析でもプロバイオティクス群の方がVAP発生率が有意ではないが低い傾向が認められた(患者総数624名;固定効果モデル:OR, 0.68; 95%CI, 0.44-1.05;変量効果モデル:OR, 0.64; 95%CI, 0.35-1.17)。

VAPの起因菌については、5編のうち2編でデータが示されていた。報告されていた起因菌は、腸内細菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、Haemophilus influenzae、Acinetobacter baumanniiおよびStenotrophomonas maltophiliaであった。プロバイオティクス群と対照群のあいだに、腸内細菌、緑膿菌および黄色ブドウ球菌によるVAP発生率の有意差は認められなかった(腸内細菌患者総数77名;固定効果モデル:OR, 1.87; 95%CI, 0.71-4.93;変量効果モデル:OR, 1.87; 95%CI, 0.71-4.94、緑膿菌患者総数77名;固定効果モデル:OR, 0.31; 95%CI, 0.08-1.19;変量効果モデル:OR, 0.31; 95%CI, 0.08-1.18、黄色ブドウ球菌患者総数77名;固定効果モデル:OR, 1.05; 95%CI, 0.36-3.02;変量効果モデル:OR, 1.06; 95%CI, 0.36-3.11)。

全死因死亡率
4編のRCTsのICU滞在中全死因死亡率の解析を行った。異質性(heterogeneity)は認められなかった(p=0.58; I^2=0%)。プロバイオティクス群と対照群のあいだに全死因ICU死亡率の差は認められなかった(患者総数481名;固定効果モデル:OR, 0.75; 95%CI, 0.47-1.21;変量効果モデル:OR, 0.76; 95%CI, 0.47-1.21)(Fig. 3)。

5編のうち2編では、入院中の全期間における全死因死亡率が報告されていた。この2編についても異質性は認められなかった(p=0.90; I^2=0%)。プロバイオティクス群と対照群のあいだに全死因院内死亡率の差は認められなかった(患者総数303名;固定効果モデル:OR, 0.75; 95%CI, 0.46-1.24;変量効果モデル:OR, 0.75; 95%CI, 0.46-1.24)。

ICU滞在期間
メタ分析の対象RCTs 5編のうち3編でICU滞在期間が示されていた。対照群と比べプロバイオティクス群の方がICU滞在日数が有意に短かった(患者総数368名;固定効果モデル:加重平均の差,-0.99日; 95%CI, -1.37~-0.61)。しかし、変量効果モデルではこの差は有意ではなかった(加重平均の差,-1.93日; 95%CI, -5.82~1.95)。ICU滞在日数が最長であった1編を除いたサブグループ解析でも同様の結果が得られた(患者総数303名;固定効果モデル:加重平均の差,-0.97日; 95%CI, -0.31~-0.29;変量効果モデル:加重平均の差,-0.49日; 95%CI, -2.25~1.27)。

人工呼吸期間
メタ分析対象文献5編のうち3編で、人工呼吸期間が示されていた。プロバイオティクス群と対照群とのあいだに人工呼吸期間の差は認められなかった(患者総数338名;固定効果モデル:加重平均の差,-0.01日; 95%CI, -0.31~0.29;変量効果モデル:加重平均の差,-2.24日; 95%CI, -6.65~2.16)。

緑膿菌の気道定着
緑膿菌の気道定着について報告していたのは、メタ分析対象文献5編のうち2編にとどまった。この2編についての異質性は認められなかった(p=0.82; I^2=0%)。対照群と比べプロバイオティクス群の方が緑膿菌定着症例が少なかった(患者総数252名;固定効果モデル:OR, 0.35; 95%CI, 0.13-0.93;変量効果モデル:OR, 0.35; 95%CI, 0.13-0.93)。

下痢
下痢が発生した患者数についてのデータが報告されていたのは5編中2編であった。この2編についての異質性は認められなかった(p=0.19; I^2=42%)。プロバイオティクス群と対照群とのあいだに下痢患者数の差は認められなかった(患者総数324名;固定効果モデル:OR, 0.61; 95%CI, 0.28-1.34;変量効果モデル:OR, 0.60; 95%CI, 0.21-1.73)。

プロバイオティクスによる合併症
プロバイオティクス製剤に起因する菌血症について触れた3編では、該当する症例は無かったと報告されていた。

教訓 プロバイオティクス群の方がVAP発生率が低く、ICU滞在期間が短く、緑膿菌の気道定着が少ないという結果が得られました。ICU死亡率、院内死亡率、人工呼吸期間、および下痢発生率については対照群と差がありませんでした。
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