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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~結果① [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

結果

呼吸周期中に開閉する肺組織と全肺胞の歪み
まずVILIの発生要因に対して人工呼吸が与える影響と、VILI発生要因とリクルートメント(加圧再膨脹)可能肺組織量との関係を知るため、全肺についてPEEP 5cmH2Oのときと15cmH2Oのときの肺胞虚脱・再開通と肺胞の歪みを分析した。PEEP 5cmH2Oでは、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者の方が虚脱・再開通する肺胞が著しく多いことが分かった(141±85 vs 20±22g, P<0.001; Figure 1A)。リクルートメント可能な肺組織量が少ない患者では、虚脱・再開通する肺胞は無視できるほど少なく、肺の総重量(1266±327g)のわずか2±2%を占めるに過ぎなかった。PEEPを15cmH2Oまで上昇させたところ、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者においてのみ虚脱・再開通肺胞が有意に減り(63±87gへ減少, P<0.001)、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が小さい患者では虚脱・再開通肺胞の量に有意な変化は認められなかった(7±35g, PEEP 5cmH2O のときとの比較でP=0.23; Figure 1A)。

PEEP 5cmH2Oで一回換気量を一定にした場合、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者における肺胞の歪みは、リクルートメント可能な肺組織量が少ない患者よりも有意に大きかった(1.29±0.58 vs 0.93±0.41, P<0.001; Figure 1B)。この原因は、リクルートメント可能な肺組織量が占める割合が高い患者の方が予測FRCが有意に少なかったからだと考えられる(P=0.005; Table 1)。一方、PEEP 15cmH2Oで一回換気量を一定にした場合は、両群において同程度に肺胞の歪みが増大した(それぞれ1.82±0.79 、1.55±0.70, P=0.89; Figure 1B)。

リクルートメント可能な肺組織の分布
ALI/ARDS肺において病変が不均一に分布することが、VILIの決定要因に影響を及ぼす可能性を検討するため、リクルートメント可能な肺組織の局所分布を頭尾軸に沿って調べた。

リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者では、PEEP 5cmH2Oにおける無含気部位の量は、頭側から尾側へ行くほど比例的にどんどん増えることが分かった。肺尖では肺重量の約10%、肺底部では約50%が無含気部分であった(P<0.001, 片側ANOVA; Figure 2A)。反対に、無含気部位のうち気道内圧45cmH2Oにしたときに再膨張する部分、つまりリクルートメント可能な肺組織は、肺全体において無視できるほど少なかった。肺底部(肺を10等分し肺尖から数えて8番目から10番目の領域)では気道内圧を45cmH2Oにすると肺胞の再虚脱(derecruitment)が起こることが分かったことが、特筆すべき点である。リクルートメント可能な肺組織の占める割合がマイナスになっているのが、derecruitmentが起こった肺組織の量である(第9および第10領域 vs その他の領域の比較でP<0.05; Figure 2A)。

反対に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、PEEP 5cmH2Oにおける無含気部位の量は頭側から尾側へ肺を10等分した各領域(肺尖に位置する1番目の領域を除く)において肺重量のおよそ40-50%と一定の割合を占めていた。肺尖に位置する1番目の領域では、無含気部位の量がやや少なかった(P=0.03, 片側ANOVA)。同様に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合は頭尾軸に沿って均一に分布し、各領域の肺重量のおよそ20-30%であった(P=0.14, 片側ANOVA; Figure 2B)。

肺実質の重量が増えることにより下位に位置する肺に加わる重力が増大するため肺胞虚脱が起こる可能性がある。そこで、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者群と多い患者群の両群において、頭尾軸に沿って最下位に位置する肺領域に加わる上乗せ圧の分布を解析した。リクルートメント可能量の多少に関わらず、頭尾軸全体にわたって上乗せ圧は比較的大きかった(Figure 2C)。さらに、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、割合が少ない患者よりも上乗せ圧がかなり大きかった。ただし、肺底部の二領域では上乗せ圧の大きさは同等であった((9番目、10番目ともにP=1.00)

教訓 リクルートメント可能な部位が多いと虚脱・再開通を繰り返す部分も多く、PEEPを上げると虚脱・再開通を繰り返す部分が減ります。リクルートメント可能な部位が少ないと虚脱・再開通を繰り返す部分は少なく、PEEPを上げてもこの部分は減りません。
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