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ショックの治療:ドパミン vs ノルエピネフリン~はじめに [critical care]

Comparison of Dopamine and Norepinephrine in the Treatment of Shock

NEJM 2010年3月4日号より

循環ショックは致死的状況であり、死亡率が高い。最優先される治療法は輸液であるが、輸液だけでは患者の状態は安定せず、低血圧の是正にはアドレナリン作働薬を要することが多い。アドレナリン作働薬の中でも、ドパミンとノルエピネフリンが最も頻用されている。この二剤はαアドレナリン受容体とβアドレナリン受容体の両者に作用するが、その作用強度は異なる。αアドレナリン受容体を刺激すると血管トーンが上昇するが、心拍出量および局所血流(特に皮膚、内臓および腎血管床)は低下することがある。βアドレナリン受容体を刺激すると、陽性変力作用および陽性変時作用によって血流が維持され、内臓血流は増える。しかし、一方でβ作用は望ましくない影響ももたらし、細胞代謝を亢進させたり、免疫を抑制したりする。ドパミンはアドレナリン受容体の他にドパミン受容体も刺激するため、ノルアドレナリンと比べると内臓および腎血流を増やす作用が強く、肺水腫の改善を促進する可能性も指摘されている。しかし、ドパミン受容体を刺激すると視床下部-下垂体の機能が変化しプロラクチンおよび成長ホルモンの血中濃度が大幅に低下し、免疫系に有害な影響が出現することがある。

つまり、ドパミンとノルエピネフリンが腎、内臓および視床下部-下垂体-副腎系に与える影響は異なる可能性があるが、この差異が臨床的にどのような意味を持つのかは未だ不明である。ガイドラインや専門家による推奨を繙くと、いずれの薬剤もショック患者の昇圧薬の第一選択薬となりうるとされている。しかし、観測研究ではドパミン群の方がノルエピネフリン群よりも死亡率が高いという結果が得られている。SOAP研究(Sepsis Occurrence in Acutely Ill Patients study)の対象となった1058名のショック患者では、ドパミン投与はICU死亡の独立危険因子であった。メタ分析では、敗血症性ショック患者においてドパミンとノルエピネフリンを比較した無作為化研究は3編が得られたにとどまり、対象患者総数はわずか62名であった。観測研究ではノルエピネフリンを使用する方がドパミンを使用するよりも転帰が良いという結果が続々と報告されている中で、臨床試験のデータは不足しており、無作為化比較対照試験の実施が待ち望まれている。本研究では、ショック患者においてドパミンではなくノルエピネフリンを昇圧薬の第一選択とすると死亡率が低下するかどうかを検討した。

検討 観測研究ではドパミンよりノルアドに軍配を上げる結果が示されています。この研究では両者を比較する前向き試験を行いました。

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