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重症患者の凝固能低下~血小板の異常① [critical care]

Coagulopathy in Critically Ill Patients Part 1: Platelet Disorders

CHEST 2009年12月号より

冠動脈、脳血管および静脈血栓は、成人ICU患者を死に至らしめる主な原因の一部である。しかし、臨床医の多くは、凝固能亢進よりも出血を重視し警戒しているものである。その理由は、観血的処置や抗凝固療法開始後に出血性合併症が起これば自責の念を感じるからかもしれないし、あるいはただ単に、血栓が形成されても体外からは見えないが、出血は一目瞭然であることが多いからなのかもしれない。幸いにも、ヒトには以下の三つの止血機構が備わっているので、臨床的に有意な出血は起こりがたい:破綻していない正常な血管壁、血小板および可溶性凝固因子。この三つのうち二つまでが相当の機能障害に陥らない限り、重篤な出血は稀にしか発生しない。本論文では、重症患者における凝固能低下の原因として最も多い血小板数低下の原因と治療について詳述する。また、血小板数正常で血小板機能が低下する病態についても簡単に触れる。

血小板の異常
血管内皮の表面が破綻すると、まず血小板が防御機能を発揮する。内皮下層が露出すると、組織因子、コラーゲンおよびvWFが動員され、フィブリノゲンおよびvWFを介した血小板凝集が促進される。すると血小板はただちに形状を変化させ、脱顆粒が起こり、血小板表面にリン脂質が発現する。このリン脂質は少量のトロンビンを生成し、血液凝固を促す。したがって、血小板数もしくは血小板機能が低下すると、止血に重大な問題が生ずるのである。

血小板減少症
ICUで遭遇する凝固能に関わる問題のうち、最も頻度が高いのが血小板数低下である。定義や調査対象患者、ICU滞在期間にもよるが、ICU患者の15~60%に血小板減少症が認められる。血小板減少症を呈するICU入室患者の半数が、すでに血小板減少症のある状態でICUに入室し、残り半数は入室後間もなく血小板減少症に陥った症例である。血小板減少症の発生頻度が最も高いのは、重症敗血症患者である。外科系患者および外傷患者では、内科系患者より血小板減少症の発生率が高い。血液浄化が行われている症例でも血小板減少症が発生することが多い。

教訓 ICU患者の15~60%に血小板減少症が認められます。発生頻度が最も高いのは、重症敗血症患者です。
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