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CDトキシンのモノクローナル抗体~方法 [critical care]

Treatment with Monoclonal Antibodies against Clostridium difficile Toxins

NEJM 2010年1月21日号より

米国、カナダおよび欧州では十年ほど前から、クロストリジウム・ディフィシル感染の激増と、それによる死亡率が上昇が問題になっている。広域スペクトラムの抗菌薬が頻用されるようになったことが、クロストリジウム・ディフィシルによる下痢症や大腸炎のリスク上昇とクロストリジウム・ディフィシル感染症の疫学の変化につながっている。その具体的が特徴は、強毒性クロストリジウム・ディフィシル株(BI/NAP1/027)の出現や、治療失敗および感染再発のリスク増大である。

我々はクロストリジウム・ディフィシルトキシンA とトキシンBそれぞれに対する完全ヒトモノクローナル抗体を作製した(CDA1とCDB1)。クロストリジウム・ディフィシル感染ラットモデルを用いこの二つのモノクローナル抗体を混合投与したところ有効性が確認され、また、健康ボランティアを対象とした第一相試験で安全性が証明された。そこで、第二相試験として無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い、CDA1とCDB1併用によるクロストリジウム・ディフィシル感染再発予防効果を検証した。さらに、この治療法の安全性、初感染例における感染持続期間および重症度、そして入院期間に及ぼす効果についても併せて調査した。

方法

対象患者
2006年7月から2008年4月までのあいだに、米国およびカナダに所在する30ヶ所の参加施設で対象患者を登録した。登録条件は、年齢18歳以上で登録の14日前以降に便中クロストリジウム・ディフィシル毒素が陽性である者とした。各施設で行われている酵素免疫法による便中毒素検査を本研究でも採用した。クロストリジウム・ディフィシル感染の治療には、メトロニダゾールまたはバンコマイシン経口投与のいずれかを選択した。担当医にその選択は任された。下痢の定義は、少なくとも二日連続して軟便・水様便が一日三回以上認められるか、一日のあいだに六回以上軟便・水様便が認められる場合とした。登録前のいずれの時点で抗菌薬治療を開始してもよいが、登録日には必ず下痢が認められなければならないものとした。

研究設計と監視
本研究スポンサーのMassBiologicsとMedarexが、研究設計と監視を担った。データ収集は各施設の主研究者が行い、統計解析は独立した統計専門家がスポンサー監督下で実施した。データおよび安全性監視独立委員会が、安全性の監視および盲検化を解除した時点における主要エンドポイント解析の実施についての責任を負った。スポンサーが採用した著者2名が、本論文の初稿を執筆した。本論文の著者全員が、漏れなく正確にデータが記載されていることを確認した。

無作為化割り当ておよび追跡調査
登録患者は、CDA1-CDB1またはプラセボ(0.9%食塩水)のいずれかを静注する群に1:1の比率で無作為に割り当てた。登録時に便検体を採取し、taurocholate-cefoxitin-cycloserine-fructose寒天培地(TCCFA)を用いて培養しクロストリジウム・ディフィシルを検出し、REA(制限酵素解析)により菌株を特定した。現在最も多く検出されるクロストリジウム・ディフィシル株は、REAではBI、パルスフィールドゲル電気泳動ではNAP1、PCRによるリボタイピングでは027と同定されている(BI/NAP1/027)。

研究初日に、CDA1とCDB1を10mg/kgずつかもしくはプラセボを生食200mLに希釈し2時間かけて投与した。84日間の研究期間中、排便回数と便の性状を毎日記録した。この記録は研究スタッフが確認した。割り当て試験薬投与後第14日までは毎日、その後第56日までは週一回、その後第84日までは月一回の頻度で研究担当者が患者を訪問し血液検体を採取した。20人目までの登録患者については、投与後第168±14日にも血液検体が採取され、免疫原性に関する検査を行った。

有効性の評価
クロストリジウム・ディフィシル感染の再発を主要評価項目とした。その定義は、初回クロストリジウム・ディフィシル感染による下痢が消失し、メトロニダゾールもしくはバンコマイシンの投与が終了した後に、また下痢が発生し、再び新たに便からクロストリジウム・ディフィシル毒素が検出された場合とした。一回目のクロストリジウム・ディフィシル再発のみを有効性評価の対象とした。副次評価項目は、初回感染の治癒日数と重症度および抗菌薬無効例(抗菌薬を変更するか、抗菌薬投与開始後第14日に至っても下痢が続いている場合)とした。全症例において、トキシンAおよびトキシンBに対する血清抗体価をELISA法で測定した。

安全性の評価
安全性を評価するにあたり、有害事象が発生した可能性があると臨床的に判断された場合は必ず、バイタルサインの測定、病歴の簡易聴取、および理学的所見の記録を行った。研究第28±3日目までの各患者訪問時に血算、生化学および尿検査を実施した。割り当て薬投与中および投与後2時間に発生した有害事象を研究参加者が記録し報告した。有害事象はAdult Toxicity Table (2001年5月)に従って分類した。モノクローナル抗体の投与に反応して出現したヒト抗ヒト抗体は、ブリッジングELISAで検出した。

統計解析
偽薬群における再発率が20%で、モノクローナル抗体投与群では6%であったときに、検出力80%でこの再発率の低下を判別するには200名の患者が必要であると算出された。主要および副次評価項目についてはITT解析を行い、無作為化割り当てされた全ての患者を対象とした。名義変数の群間比較にはFisherの正確検定(両側)を適用した。連続変数の群間比較には、両側t検定を適用した。事象発生までの時間に関する変数の解析にはKaplan-Meier曲線を用い、ログランク検定で比較した。

関連記事:クロストリジウム・ディフィシル~再発例の治療

教訓 クロストリジウム・ディフィシルトキシンA とトキシンBそれぞれに対する完全ヒトモノクローナル抗体をクロストリジウム・ディフィシル感染ラットモデルに混合投与したところ有効性が確認されました。本研究は第2相試験です。
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