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敗血症患者の代謝性アシドーシス~方法 [critical care]

Metabolic acidosis in patients with severe sepsis and septic shock: A longitudinal quantitative study

Critical Care Medicine 2009年10月号より

対象患者と方法

患者とデータ収集

本研究はサンパウロ大学付属病院(ブラジル)の、12床からなる内科系・外科系混合ICUで実施された。臓器障害が発生してから24時間以内に現行の診断基準で重症敗血症または敗血症性ショックと診断された患者を対象とした。ICU入室時に患者を対象とするか否かを決定した。ICU入室後第5日目、死亡、腎代替療法開始もしくはICU退室日のいずれかもっとも早い時点まで前向きに毎日データを収集した。主解析は、全患者の研究開始日および終了日のデータについて行った。副解析では5日(120時間)以上生存した患者についてのみ、5日目までの毎日のデータすべてを対象とした。健康成人ボランティア10名を対照群とし、動脈血ガス検体を各人一回採取した。

血液ガス分析器(OMNI C; Roche Diagnostics System)から出力される以下のデータを収集した:pH、二酸化炭素分圧、炭酸水素イオン、SBE、イオン化カルシウム。使用した血液ガス分析器では、炭酸水素イオン濃度はHenderson-Hasselbalchの式を用いて算出され、SBEはSiggard-Andersen(Van Slyke)の式から算出される。動脈血ガス分析のほかに、ナトリウム、カリウム、総マグネシウム、塩素、アルブミン、リンおよび乳酸値を測定した(ADVIA 1650; Bayer)。

酸塩基平衡定量分析の解釈における概念構造

生理化学的定量分析を行うにあたり、Stewartの生理化学的定量法をFiggeらが修正した方法を適用した。この方法では、水素イオン濃度すなわちpHは、互いに独立する以下の三つの変量が決定するとされている:強イオン差(SID ; strong ion difference)、弱酸の総濃度(ATOT)および二酸化炭素分圧(PCO2)。この方法では、まず見かけ上のSID (SIDa ; apparent strong ion difference)を算出する。

SIDa = [Na+] + [K+] + [Mg2+] + [Ca2+] - [Cl-] - [lactate].

重症患者ではICU入室時の乳酸値は死亡率の独立予測因子であるため、見かけのSIDは、無機イオンの差([Na+]+[K+]+[Mg2+]+[Ca2+]−[Cl−])と血漿乳酸濃度とに「分割」される。

一方、血漿水分中の電荷平衡における弱い酸(アルブミンとリン酸塩)と二酸化炭素の影響を踏まえてSIDを算出することも可能である。この方法で得られる値は、有効強イオン差(SIDe ; effective strong ion difference)と呼ばれる。FiggeらによるSIDe算出式は以下の通りである。

SIDe = 2.46 × 10^(pH-8)× PCO2+ [Alb] × (0.123 × pH - 0.631) + [Phosphate] × (0.309 × pH - 0.469).

見かけのSID-有効SIDはゼロ(電気的に中立)となるはずであるが、測定されない電荷があれば「イオンギャップ」が生ずる。このような電荷を強イオンギャップ(SIG ; strong ion gap)と言う。

SIG = SIDa-SIDe

SIGが正であれば、測定されない陰イオン(硫酸塩、ケト酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩など)が存在することを意味する。SBEは弱イオンの総濃度が一定であるときのSIDの変化をあらわすので、我々はSIG、乳酸、無機イオン差、アルブミンおよびリン酸塩を反映するものとしてSBEを解析した。つまり、SBEを代謝性アシドーシスの指標として捉え、SIG、乳酸、無機イオン差、アルブミンおよびリン酸塩といった生理化学的要素のとる値が、SBEの変化を決定するものと考えたのである。

尿のSID(SIDu)とクレアチニンクリアランス(CrCl)は、以下の式を用いて算出した。

SIDu= 尿中ナトリウム+尿中カリウム-尿中塩素

CrCl=一日尿量(mL)×尿中クレアチニン÷1440÷血漿クレアチニン

SBEへの寄与分

SIG、無機イオン差、乳酸、リン酸塩およびアルブミンがSBE測定値に与える影響を調べるため、各変数についてSBEに寄与する程度を求めた。各変数がどれほどSBE値に寄与しているのかを、それぞれの変数による電荷差の平均によってあらわした。SBE値への寄与がマイナスの値であらわされれば、アシドーシスを引き起こす効果があり、プラスであればアルカローシスを引き起こす効果があることを意味する。例えば、乳酸値が2mEq/Lのとき、正常値の1mEq/Lと比べるとSBEは-1mEq/L変動する。すなわちSBE変動への寄与分は-1mEq/Lということである。

教訓 強イオンギャップ(SIG ; strong ion gap)=見かけのSID-有効SID SIGはゼロになるはずですが、正であれば、測定されない陰イオン(硫酸塩、ケト酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩など)が存在することを意味します。
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