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ALIにおける理学的所見とPACデータの関連~はじめに [critical care]

Association of physical examination with pulmonary artery catheter parameters in acute lung injury

Critical Care Medicine 2009年10月号より

肺動脈カテーテル(PAC)で得られる情報に基づいて重症症例の治療を行ったり、心係数(CI)や混合静脈血酸素飽和度(SvO2)の目標値を設定して管理を行ったりする手法について研究が行われてきたが、転帰の改善が得られるという結果は得られていない。重症患者の循環動態の評価や治療方針の決定には、PACは必要ではなく、理学的所見や、PACを使わなくても得られる客観的パラメータからPACに引けを取らない情報が得られると考えられている。循環動態が不良であることを示す理学的所見は、毛細血管再充満時間の延長、膝のまだら模様および皮膚温低下である。PACなしで得られる客観的パラメータのうち、循環動態の評価に用いられるのは、尿量やその他の体液喪失量、中心静脈カテーテル(CVC)から得られる中心静脈圧と中心静脈血酸素飽和度(ScvO2)である。

我々は、NHI/NHLBI ARDSネットワークが行ったFluid and Catheter Treatment Trial(FACTT)のデータを利用し、ALI/ARDS患者における、理学的所見および客観的パラメータ(水分喪失量、中心静脈圧およびScvO2)と、CIおよびSvO2に相関関係があるかどうかを検討した。FACTTは、制限輸液vs 大量輸液、CVC vs PACの比較を目的とした2×2デザインの無作為化臨床試験で、1001名の患者が対象となった。

FACTT研究で収集されたデータは、循環動態が不良であることを示す理学的所見三項目:毛細血管再充満時間の延長(>2秒)、膝の皮膚のまだら模様、四肢皮膚の冷感である。CVCデータを指標に治療を行う群に割り当てられた患者では、以上三つの理学的所見が同時に認められれば循環動態が不良であると判断し、プロトコルで定められた治療が行われた。PACデータを指標に治療を行う群に割り当てられた患者では、治療方針の決定に理学的所見は用いられなかったが、PACで得られた血行動態パラメータとの比較をするのは可とした。

本研究では、ALI/ARDS患者において、循環動態が不良であることを示す理学的所見と、PACなしで得られる客観的パラメータ(24時間の総水分喪失量、ScvO2および中心静脈圧)はCIおよびSvO2低値と相関する、という仮説を検証した。そこで、FACTTでPAC群に割り当てられた患者のデータを解析し、以下の三つの課題を評価した:1) 基準時点において、循環動態不良を示す理学的所見がある場合に、CI<2.5またはSvO2<60%であるかどうか。;2) 研究開始日から第7日までのデータにおいて、理学的所見と客観的パラメータ(24時間水分喪失量および中心静脈圧)がCI<2.5またはSvO2<60%と相関しているかどうか。;(3) ScvO2とSvO2が相関しているかどうか、また、ScvO2が低い場合にSvO2も低いかどうか。

教訓 循環動態が不良であることを示す理学的所見、水分喪失量、ScvO2および中心静脈圧が、PACで得たCIおよびSvO2の値と一致するかどうかを調べてみました。
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