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アナフィラキシーと麻酔~治療① [anesthesiology]

Anaphylaxis and Anesthesia: Controversies and New Insights

Anesthesiology 2009年11月号より

周術期アナフィラキシーの治療

可能な限り以下の方策をとるべきである:(1) 原因であると疑われる薬剤の使用を中止する;(2) 導入中にアナフィラキシー反応が出現したら、麻酔薬の投与をすぐに中止する;(3) 100%酸素を投与する;(4) グレード3または4の症例では速やかにエピネフリンを投与する;(5) 救援要請、特にグレード3または4の場合;(6)トレンデレンブルグ体位にする;(7) 術中に発生した場合は、可能であれば手術を省略して早く切り上げる。

循環動態を安定させるのが最優先
エピネフリン静注と輸液が、アナフィラキシー治療の要である。アナフィラキシー発生時には、エピネフリンの絶対禁忌はないので、臨床的に必要であると判断されれば躊躇なく速やかに使用しなければならない。アナフィラキシーが発生し、死亡など転帰不良であった症例では、エピネフリン投与の遅れまたは投与しなかった、投与量が不足または多すぎたなどの要因が関与していることが明らかにされている。したがって、エピネフリンは必要量を慎重に投与する必要がある。

グレード1の反応が見られる場合は、エピネフリンを投与してはならない。グレード2では時として少量(10-20mcg)のエピネフリン投与が必要なことがある。グレード3では、血行動態の変化を観察しながら1-2分ごとに100-200mcgずつエピネフリンをボーラス投与しなければならない。繰り返し投与が必要であれば持続投与を開始する(1-4mcg/min)。グレード4(心停止)の場合は、CPRを実施する。エピネフリンは1mgずつ3~5分ごとに投与する。持続投与は4-10mcg/minで行う。

輸液
アナフィラキシーが発生し血管透過性が変化すると、血管内水分の50%が間質へ移動する。したがって、大量の水分移動を補うため、速やかに輸液療法を開始しなければならない。

気管支攣縮
気管支攣縮が認められたら、β2刺激薬(サルブタモールやアルブテロール)の吸入剤を使用する。それでもおさまらなければ、β2作働薬を静注する(サルブタモール100-200mcg)。必要であれば持続投与も考慮する(5-25mcg/min)。循環虚脱と気管支攣縮が同時発生した場合は、循環動態の回復を最優先に治療を行わなければならないため、エピネフリンが第一選択である。エピネフリンにはβ2作用があるため、気管支攣縮にも有効である。副腎皮質ステロイドの早期投与も推奨される。副腎皮質ステロイドの効果は、少なくとも4-6時間後にしか発現しない。

その他の治療法
アナフィラキシーの治療において、副腎皮質ステロイドand/or H2受容体拮抗薬を推奨する意見をよく見かけるが、いずれも偽薬対照試験でその効果が確認されているわけではない。アナフィラキシーを繰り返す症例についての遡及的研究では、副腎皮質ステロイドおよび抗ヒスタミン薬を投与しても、二相性アナフィラキシー(ほとんどのアナフィラキシー反応は単相性だが、およそ10%の症例では、数時間後から半日後に2回目の症状が発現することがあり、これを二相性アナフィラキシーと呼ぶ。)を予防することはできないことが明らかにされている。したがって、一旦アナフィラキシー症状がおさまっても、注意深い観察を続けなければならない。副腎皮質ステロイドは、血管性浮腫には有効である。

教訓 エピネフリン静注と輸液が、アナフィラキシー治療の要です。グレード1では、エピネフリン投与不要、グレード2では時として少量(10-20mcg)のエピネフリン投与が必要なことがあります。グレード3では、血行動態の変化を観察しながら1-2分ごとに100-200mcgずつエピネフリンをボーラス投与します。グレード4(心停止)の場合は、CPRのアルゴリズムに従います。アナフィラキシーによる死亡症例では、エピネフリン投与の遅れまたは投与しなかった、投与量が不足または多すぎたなどの要因が関与していることが明らかにされています。
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