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重症患者の経静脈栄養~エビデンス [critical care]

Parenteral Nutrition in the Critically Ill Patient

NEJM 2009年9月10日号より

臨床的根拠
重症患者に対する経静脈栄養の有効性を検討した研究のうち、良質の無作為化比較対照試験はほぼ皆無である。対象患者数が少なかったり、重症疾患の定義がはっきりしなかったり、無作為化の手法が不適切であったり、ITT解析を行っていなかったりといった問題点がある研究が大半を占めている。また、大半の古い研究で投与されている経静脈栄養製剤中のブドウ糖およびカロリーは、現在の基準では多すぎる。ICU患者の罹患率および死亡率にブドウ糖が及ぼす影響は入り組んではいるものの、大多数の研究者は血糖値が180mg/dLを超えると、死亡率および合併症発生率が上昇するという一致した見解を示している。

以上のような問題はあるとはいえ、諸研究が指し示すところによると、経腸栄養が不可能で経静脈栄養を行う場合には、中等度から高度のタンパク熱量栄養不良にしておく方が有益であるようだ。しかし、消化管が機能していて経腸栄養を適切に行うことができるICU患者では、経静栄養よりも経腸栄養に軍配が上がることが、非常に多くのデータで示されている。

重症患者を対象として経腸栄養と経静脈栄養をITT解析で比較した良質な研究についてのメタ分析(各試験の対象患者数は200名未満)では、経腸栄養群の方が有意に死亡率が低いことが明らかにされている(OR, 0.51; 95%CI, 0.27-0.97; P=0.04)。経腸栄養による死亡率低下効果の大きさは、開始時期が早期(ICU入室後または受傷後24時間以内)であるか否かによって左右された。経静脈栄養群では感染率が有意に高かった。成人重症患者を対象とした無作為化臨床試験13編についての体系的総説でも、経静脈栄養群と比べ経腸栄養群では感染性合併症発生率が有意に低いことが示されている(OR, 0.64; 95%CI, 0.47-0.87; P=0.004)。しかし、この研究では死亡率については有意差は認められなかった(OR, 1.08; 95%CI, 0.70-1.65; P=0.70)。

ここ数年、集中治療領域では、厳格な血糖管理、低カロリー栄養および代替基質の使用といった栄養療法における変化の潮流がある。それを踏まえると、現在実際に行われている栄養療法について、しっかりした試験を行う必要がある。

参照:重症患者の栄養ガイドライン

教訓 経腸栄養が不可能で経静脈栄養を行う場合には、中等度から高度のタンパク熱量栄養不良にしておく方が転帰が良くなるようです。消化管が機能していて経腸栄養を適切に行うことができるICU患者では、経静栄養よりも経腸栄養に軍配が上がります。
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