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喘息最前線2008~機序 [critical care]

Update in Asthma 2008

Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2009年5月15日号より

喘息の病理生物学的機序

喘息における気道平滑筋細胞の役割、およびアレルゲンに暴露されたときの細胞やサイトカインの反応もしくはこれらの反応の阻害についてのヒトを対象とした研究が行われている。ヒトライノウイルスの慢性感染が肺機能の悪化に関与していることや、常態的に気道閉塞がある喘息患者では循環血液中に線維細胞が出現する頻度が高いことが報告されている。Severe Asthma Research Program (SARP)から今年は2編の研究の報告があった。1編は重症喘息患者の気道におけるリポキシンの変化に関するものである。リポキシンが変化すると、肝腎な抗炎症作用が失われるため、持続的な気道炎症が生ずる。もう1編は、重症喘息における血漿アルギニンの生物活性と気道閉塞の程度との関連についての報告である。今年発表された他の2編の研究を踏まえると、このアルギニン活性と気道閉塞についての報告は特に興味深い。関連する別の2編のうち1編は、Childhood Asthma Management Program (CAMP)コホートの小児において、アルギナーゼ1遺伝子の遺伝子変異と気管支拡張薬に対する反応の関連を示したものである。もう1編は喘息モルモットモデルにアルギナーゼ阻害薬またはL-アルギニンを投与し、アレルゲン誘導性の気道閉塞および気道過敏性が減弱することを示したものである。以上を総合的に勘案すると、アルギニン経路が気道閉塞の発生に重要な働きを及ぼしていることや、アルギナーゼ活性の調節が喘息治療に役立つ可能性があることが示唆される。

今年は動物モデルを使用した喘息研究が目立った年であった。そして、「完璧な治療計画」が時として有害事象を引き起こしかねないことが示された。たとえば、気道のリモデリングを防ぐ目的で抗TGF-βを投与すると、リモデリングに関してはなんら改善を得ることができず、炎症が悪化することが分かった。また、アレルゲン除去とステロイド中止を同時に行うと効果的であるという仮定の下に行われたマウスを用いた研究では、気道の炎症が軽減するどころかむしろ増悪するという結果が得られた。IL23/Th17欠損マウスでは好中球増多と好酸球増多の両者を伴う炎症が認められることが示されており、これが喘息におけるステロイド抵抗性の病理生物学的機序に関わっているのではないかと考えられる。また、TLR2機能の異常による慢性マイコプラズマ感染が、持続的な気道炎症の原因として指摘されている。

喘息における主要な病理生物学的機序は、動物実験であれ、ヒトを対象とした研究であれ、新しい知見が加わるごとに、その様相は複雑さを増している。異なる喘息病型それぞれについての機序が徐々に明らかになっている。正確な解釈とデータの正しい応用を可能とする、適切な喘息モデル(マウス、ヒト、それ以外の動物)の作成や生物学的機序の解明が現下の課題である。

教訓 アルギニン経路が気道閉塞の発生に重要な働きを及ぼしていることや、アルギナーゼ活性の調節が喘息治療に役立つ可能性があることが示唆されています。TLR2機能の異常による慢性マイコプラズマ感染が、持続的な気道炎症の原因として指摘されています。
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