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HIV感染患者の集中治療~ICUにおける抗レトロウイルス治療 [critical care]

NEJM 2006年7月13日号より

Intensive Care of Patients with HIV Infection

薬物投与経路、吸収および用量 
 認可されている抗レトロウイルス治療薬は、enfuvirtide以外はすべてカプセルまたは錠剤である。内服液がある薬剤もあるが、注射薬があるのはzidovudineだけである。内服液製剤のない薬剤は、カプセルはあけて、錠剤は砕いてフィーディングチューブから投与することができるが、このような投与方法で適切な血中濃度を得られるかどうかは不明である。徐放剤および腸溶剤は粉砕して投与すると血中濃度が低下するため粉砕してはならない。
 重症患者では抗レトロウイルス治療薬の吸収が障害されていることが分かっている。消化管蠕動の低下、栄養剤の持続経腸投与、経鼻胃管の吸引およびストレス性潰瘍予防薬による胃内アルカリ化によって消化管内投与した薬物の吸収動態が変化する。たとえば、抗レトロウイルス治療薬の中には、経腸栄養投与を一時中断して十分薬が吸収されるようにしなければならないものがある。一方、副作用を減ずるために栄養剤と一緒に投与しなければならない抗レトロウイルス治療薬もある。さらに、H2ブロッカーおよびPPIとの併用が禁忌である抗レトロウイルス治療薬もある。
 腎障害または肝障害がある場合は、投与量を調節しなければならない。Abacavir以外のすべてのNRTI (核酸系逆転写酵素阻害剤)は腎機能低下によりクリアランスが低下するため投与量を調節する。腎不全患者では定型的なNRTI併用療法を行うことができない。各薬剤の投与量を患者ごとに調節する必要がある。肝機能障害によって多くのプロテアーゼ阻害剤および非核酸系逆転写酵素阻害剤の代謝が低下するので、投与量を調節しなければならない。また、患者の腎機能および肝機能の変化に伴いそのつど投与量を調節する必要がある。

薬物相互作用および毒性
 抗レトロウイルス治療薬、特に非核酸系逆転写酵素阻害剤およびリトナビル増量を含むプロテアーゼ阻害剤併用療法には、HIV関連薬あるいはICUで通常よく使われる薬剤との重大な相互作用があることが知られている。たとえば、非核酸系逆転写酵素阻害剤またはプロテアーゼ阻害剤を投与されている患者ではベンゾジアゼピン濃度が著しく上昇するため、ミダゾラム投与後は、特に非挿管患者では厳重な監視を行う必要がある。新しく開発された抗レトロウイルス治療薬は、以前の薬剤と比べ安全性が格段に増しているとはいえ、これら薬剤の副作用がICU患者の診断および治療において問題となることがある。抗レトロウイルス治療薬によってAIDS関連疾患が減少しているのは事実だが、一方で過敏症、Stevens-Johnson症候群、肝壊死、膵炎、乳酸アシドーシスといった稀ではあるが致死的な毒性が発現することがある。たとえば、abacavirには重篤な過敏症が発生することがあり、本薬剤の再投与により稀には死亡する場合がある。Abacavirを投与された患者の約8%に全身症状を伴う過敏症が発生し、通常6週間以内に高熱、全身発赤、悪心、頭痛が認められ、稀には呼吸困難を伴うことがある。Abacavir投与を中止すれば症状はたいていの場合48時間以内に消失するが、投与を継続すると呼吸不全および低血圧に陥る可能性がある。抗レトロウイルス治療薬の毒性が疑われる場合は、直ちに当該薬を中止すべきである。(つづく)

教訓 HIV治療薬を使うときは、投与経路、併用薬との相互作用に注意。

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