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HIV感染患者の集中治療~HIVに関連する合併症 [critical care]

NEJM 2006年7月13日号より

Intensive Care of Patients with HIV Infection

呼吸器疾患
 ニューモシスティス肺炎、細菌性肺炎(MRSAによるものを含む)、結核が感染による呼吸不全のうち重要な位置を占めていることには変わりないが、HIV患者の寿命が延長するに従い、喘息、肺気腫などのHIVに関連しない原因によって呼吸不全に陥る患者が珍しくなくなってきている。抗レトロウイルス治療開始後に発生する免疫再構築症候群によってニューモシスティス肺炎、結核、その他の抗酸菌による肺炎が発生し呼吸不全に陥ることもある。免疫再構築症候群は、抗レトロウイルス治療実施後数日から数週間経過してから発生し、その原因はニューモシスティスや抗酸菌抗原に対する過剰な炎症反応であるとされている。免疫再構築症候群の診断は、その他の呼吸不全の起因疾患を除外した後に確定しなければならない。本症候群の治療薬は副腎皮質ステロイドである。ニューモシスティス肺炎患者ではpneumatoceleが高率に存在し陽圧換気による気胸発生の可能性が高いため、ARDSネットワークガイドラインの遵守が特に重要である。HIV非感染患者と同様にHIV感染患者においては、緑膿菌および黄色ブドウ球菌が院内発生細菌性肺炎の主要起炎菌である。MRSAはHIV感染のある院内肺炎患者における死亡の独立した危険因子であり、予測経験的抗菌薬治療開始時にMRSAを念頭に薬剤選択を行わなければならない。

心疾患 
 抗レトロウイルス治療を行うと、脂質代謝異常、インスリン耐性および糖尿病などの動脈硬化の原因となる代謝異常が発生する。抗レトロウイルス治療によってHIV感染患者の心血管系疾患罹患リスクが上昇するものと考えられている。HIV感染患者の急性冠症候群ではPCI後の再閉塞率が非感染患者より高い。再閉塞率が高い理由はよく分かっていないが、薬物溶出性ステントを用いて再閉塞率を減少させるよう努めるのが好ましいと考えられる。

肝疾患
 ウイルス性肝炎による肝不全は重症合併症および死亡率の主因となってきており、抗レトロウイルス治療の方針決定に際し肝炎治療との兼ね合いに悩まされることがある。ラミブジン、エムトリシタビン、テノフォビルの三種の抗レトロウイルス薬はHBVに対しても有効である。HBVはラミブジンまたはエムトリシタビンのみの単剤治療では高率に耐性を示すため、この二剤のうちのどちらかとテノフォビルとの併用療法を行わなければならない。未治療のHIVおよびHBV感染患者に対して抗レトロウイルス治療を開始する場合は、テノフォビルに、ラミブジンまたはエムトリシタビンのどちらかを併用することによってHBVも同時に治療することができる。HIVおよびHBVの抗ウイルス治療を行われている患者がICUに入室したときは、抗ウイルス薬の投与中止によるB型肝炎の劇症化例が報告されていることから、可能な限り抗ウイルス治療を継続すべきである。
 HCV感染に伴う肝不全を呈する重症患者の治療において、ペグインターフェロンとリバビリンの併用による有毒作用および薬物相互作用(例;重篤な好中球減少、血小板減少、用量依存性貧血)はしばしば頭を悩ませる問題となる。HCVの治療をすでに受けている患者では、可能であればその治療を継続すべきである。HIV感染患者が末期肝不全に陥った場合は部分肝移植の適応となることもあり、移植専門施設への転送も考慮すべきである。
 ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、中でもスタブジンの投与によって乳酸アシドーシス、脂肪肝が発生し、稀には急性肝不全が起こることもある。そのような症例では死亡率は50%にも達するため、上記の合併症のうちいずれかが認められる場合は抗レトロウイルス治療を直ちに中止しなければならない。

腎疾患
 HIV関連腎症による末期腎不全、HBVまたはHCV感染、糖尿病あるいは高血圧はHIV感染患者における重症合併症または死亡の主な原因である。末期腎不全のHIV感染患者に対する治療では、透析や腎移植が適応となる場合もある。HIV関連腎症の原因はHIV感染そのものであるため、抗レトロウイルス治療を行うことによって病勢を抑制できる可能性がある。治療抵抗例では副腎皮質ステロイドが必要なこともある。(つづく)

教訓 HIV患者はPCI後の再狭窄率が高いので、DESの使用が好まれているようです。

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