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夜間ICU退室と死亡率 [critical care]

Critical Care Medicine 2008年8月号より

The association between nighttime transfer from the intensive care unit and patient outcome.

夜間にICUを退室した患者は、日中に退室した患者より死亡率が高いと報告されている。
これらの報告は、UK、カナダ、オーストラリア、フィンランドからのものでICU夜間退室と死亡率を調査した米国の報告はない。本研究ではMayoメディカルセンターに所在する3つのICUから2003年から2006年に生存退室した成人患者についてICU夜間退室について遡及的に調査した。

Mayoメディカルセンターは2つの病院を擁し、入院病床数は1900床である。ICUは9つあり総病床数は156床である。ICUの病床占拠率は55%から81%である。今回の調査対象とした3つのICUの内訳は、内科系ICU(24床)、内科系外科系混合ICU(18床;移植、血液/腫瘍内科、一般外科、整形外科患者を収容)、外科系ICU(20床;外傷および心臓外科以外のすべての外科系患者を収容)である。内科系ICUと内科系外科系混合ICUはclosed ICUである。外科系ICUはopen ICUであるが治療方針の決定は大部分を集中治療医が行っている(調査対象とならなかった6つのICUでは治療方針は主治医が決定している)。看護師一人当たりの患者数は1人または2人である。夜間退室の定義は午後7時から午前6時59分までの退室とした。ICU看護師の勤務体制が、午後7時と午前7時に交代する12時間二交代制であるためこの時間を夜間と定義した。

4年間で15,511名の患者がICUから生存退室した。そのうち11,659名が調査対象となり、418名(3.6%)が夜間退室した。ICU Day#1の予測死亡率とICU在室最終日のAPACHEⅢスコアは夜間退室群の方が有意に高かった。院内死亡率は全体では4.5%であり、夜間退室群が5.3%、日中退室群が4.5%であった(P=0.478)。重症度調整後院内死亡率には有意差は認められなかった。夜間退室群のICU再入室率は有意に高かった(12.2% vs 9.0%, P=0.027)。入院期間中央値も夜間退室群の方が有意に長かった(8日 vs 7日, P=0.013)。夜間退室群と日中退室群とで、その日の全ICU病床占拠率(156床中約101床)、病院全体の病床占拠率(1900床中約920床)に有意差は認められなかった。DNR患者の割合に有意差は認められなかった(日中8.8% vs 夜間10.8%)。

Goldfradらの研究(UK, 夜間の定義10PM-6:59AM, 夜間退室の院内死亡RR1.46)では、ICUベッド数不足を原因とする退室が夜間は42.6%、日中は5.0%であった。常時ICUが満床になるような施設では、ICUベッド不足を原因とする夜間退室症例が多いことが死亡率上昇につながっている可能性がある。今回の研究では夜間退室となった理由までは分からなかったが、MayoメディカルセンターではICUが9つもあり”bed pressure”は他院と比べればないと言ってもよく、ICUを退室させるには忍びないような患者を退室させてまで、より重症度の高い患者のためにICUベッドを空ける必要性に迫られることはほとんどない。今回の研究では今までの報告と異なり、夜間退室によって死亡率が上昇するという相関関係は認められなかった。しかし、夜間退室群はICU再入室率が高く、入院期間がわずかに延長することが分かった。夜間退室が死亡率上昇につながらなかったのは、ICUのベッド数が十分確保されており、退室を急がせたり、ICU再入室が遅れたりするような要因がないことが原因として推測される。

以下editorialより

病床占拠率が85%を超えると医療事故発生リスクが上昇する。全米のICUベッド占拠率(1985-2000)は65%であるが、大都市のICUではベッド占拠率が非常に高い。この研究結果を当てはめることができない施設もある。

教訓 夜間ICU退室と死亡率の関係について調査した研究では、そのほとんどが夜間退室率が>10%で、院内死亡のRRは1.35から2.09と報告されています(夜間の定義は終わりは7時頃まで、はじまりは本研究より遅く21時以降のものが多い)。夜間退室は避けた方がよさそうです。

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