SSブログ

2007年 集中治療領域の進歩 ~輸血・輸液と呼吸の巻~ [critical care]

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2008年4月15日号より

Update in Critical Care 2007

小児を対象とした空前の大規模RCTで、赤血球輸血閾値をヘモグロビン7g/dLに設定したところ、輸血量が減り、転帰の悪化も認めなかった。

重症患者にエポエチン・アルファ(40000単位)の週一回投与を最長三週間続けると血栓性有害事象が増えるだけで、赤血球製剤輸血量は減らないという結果が得られている。

生食対アルブミン製剤輸液評価(SAFE)研究の事後分析で頭部外傷患者においては急性期輸液にアルブミン製剤を用いた群の方が死亡率が高かった。

TRALIのリスク因子として女性供血者の血液製剤使用と抗顆粒球抗体の関与が明らかにされた。

ARDSネットワークの定めた目標値である一回換気量6mL/kg(予測体重)および吸気プラトー圧30cmH2O未満に従って人工呼吸管理を行うと患者のうち三分の一で呼吸サイクルに伴う断続的な過膨張と炎症の悪化が認められることが明らかにされ、人工呼吸器による肺損傷(VILI)を防ぐには吸気プラトー圧を28cmH2O未満とする必要があることが指摘された。

1200名以上のALI患者を対象としたNO吸入療法についてのメタ分析では、死亡率の改善は認められず、PaO2:FIO2比は13%ほど改善するにとどまり、肺動脈圧には有意な変化はなく、一方で腎機能障害の危険性上昇が懸念されるという結果が得られた。

ALIに対する非侵襲的人工呼吸は熟練者であれば十分実施可能であると考えられるが、転帰が改善するという報告は得られていない。

早期ALI症例に「少量」コルチコステロイド長期投与(メチルプレドニゾロン1mg/kg/dayを28日間かけて漸減させながら投与する)を行ったところ、一次転帰項目である第7病日における肺損傷スコアおよびCRPの改善が認められたが、本研究ではコルチコステロイドが有利になるような無作為割当の方法(2:1で割当)、早期試験中止規則、患者の重複などが存在するため、本論文で述べられている結果の解釈に批判が向けられるのはやむを得ないであろう。

ARDS症例におけるリクルートメント手技について少人数の患者を対象として肺水腫の程度について調査した研究で、リクルーメント手技に反応した患者では肺の水分排出が改善したが、反応しなかった患者では水分排出がかえって悪化した可能性があると報告されている。

多くのICUでルーチーンとして行われているケアを検証した非盲検化無作為割当試験で、胸部X線写真のルーチーン撮影によって人工呼吸期間が4日延長し、かつ再挿管率や何らかの治療的介入を必要とする程度の低酸素血症の発生率は低下しないという結果が得られた。

毎日ルーチーンで胸部写真を撮影するよりも必要に応じて撮影するほうが、診断効率が良く、撮影枚数も少なく、かつ有害事象も認められないということが一編のRCTと二編の前後比較研究で明らかにされた。

単一施設コホート研究で、心臓手術を受けた患者において気管切開は深部胸骨感染の独立した危険因子ではないことが明らかにされた。

教訓 ALI/ARDSの人工呼吸はdriving pressureを小さくすることがポイント。胸部X線写真の所見にはあまり振り回されない方がいいようです。
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。