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強化腎代替療法は急性腎不全の転帰を改善しない [critical care]

NEJM 2008年7月3日号より

Intensity of Renal Support in Critically Ill Patients with Acute Kidney Injury

急性腎障害患者に対する血液透析が実用化されてから60年以上経過した現在でも、腎代替療法の最適な開始時期、方法は分かっていない。強化腎代替療法によって生存率が改善するという結果を得た単一施設研究が複数発表されている一方で、否定的な結果も報告されている。本研究では、強化腎代替療法によって急性腎障害を伴う重症患者の死亡率が低下するという仮説が検証された。

血行動態が安定していれば間欠的透析、血行動態が不安定ならばCHDFまたは低効率長時間透析を実施した。
強化治療群では間欠的透析・低効率長時間透析を週6日(日曜日以外の毎日)、CHDFは35mL/kg/hrで行った。
非強化治療群では、それぞれ週3日、20mL/kg/hrで行った。
両群とも間欠的透析・低効率長時間透析のKt/Vureaは1.2から1.4とした。

1124名の患者が対象となった。
60日死亡率は強化治療群53.6%、非強化治療群51.5%であった。(オッズ比1.09; 95%CI 0.56-1.40; P=0.47)
腎代替療法実施期間、腎機能回復率、腎以外の臓器不全発生率についても有意差は認められなかった。

急性腎障害を伴う重症患者に対して強化腎代替療法を行っても、臨床で広く行われているのと同様の腎代替療法(非強化腎代替療法)と比較し、死亡率は低下せず、腎機能回復に寄与せず、腎以外の臓器障害発生率も低下しない。

血行動態が安定している患者にKt/Vurea 1.2-1.4の間欠的血液透析を行う場合、週3回を超えて行っても転帰は改善しない。
血行動態が不安定な患者にCHDFを行う場合、浄化量を20mL/kg/hr以上にしても転帰は改善しない。

本研究の問題点
①腎代替療法開始時期について厳密な取り決めは設定されていない。→重症患者における腎代替療法開始の最適時期については諸説あり、結論は出ていない。
②対象患者に占める男性の割合が大きい。→急性腎障害は女性よりも男性で発生頻度が高い。重症急性腎障害患者の59-64%が男性であると報告されている。
③進行したCKD患者が除外されている。→中等度から重症のCKD患者が急性腎障害を併発した場合には、本研究の結果を敷衍するのは適当ではない可能性がある。

教訓 renal indicationの血液浄化では以上の結果。フツーにやればいいということのようです。non-renal indication RRTの有効性の解明、high flow, high volume RRTが通常のRRTより有効であるかどうかの解明など、non-renal indication派には研究ネタが尽きないところ。がんばってください。


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