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術後の視力障害 [anesthesiology]

Anesthesiology2008年5月号より

Effects of Anemia and Hypotension on Porcine Optic Nerve Blood Flow and Oxygen Delivery. は、術後視力障害の発生機序について示唆を与える研究である。本研究ではブタを使って貧血および低血圧による視神経の血流と酸素運搬量の変化が調査された。

血管内容量が維持された低血圧下では脳、視神経とも血流量および酸素運搬量は変化しなかった。血管内容量が減少した状態での低血圧下では脳血流および脳酸素運搬量は変化しなかったが、視神経の酸素運搬量は低下した。貧血に陥ると脳血流は増加し、脳酸素運搬量は変化しなかったが、視神経は貧血下では低血圧であってもなくても血流は増加せず、したがって酸素運搬量は低下した。

以上の結果から脳血流量および酸素運搬量に変化が及ばない程度の貧血や低血圧であっても、視神経の血流や酸素運搬量は低下すると言える。

以下editorialから

長時間の腹臥位脊椎手術1000例あたり1例に何らかの視力障害が認められると言われている。虚血性視神経症(ION; ischemic optic neuropathy)がその病因であるとされている。術後IONの発生機序は十分解明されているとは言えないが、貧血、低血圧、静脈鬱血による眼窩浮腫が関与していると考えられている。ASAの調査では1L以上の出血と6時間以上の腹臥位が術後IONの危険因子であるという結論が得られている。

しかし、出血量の少ない比較的短時間(3-4時間)の腹臥位手術後の術後ION症例も報告されている。したがって術後IONには患者要因も関わっていると考えられている。IONには特発性のものもある。普通の睡眠から覚醒したときに睡眠前にはなかった視力障害が発生しているのが典型的な特発性IONである。高血圧、糖尿病、血管疾患、眼底写真で陥凹乳頭径比が小さい場合、睡眠時無呼吸などが特発性IONの危険因子であるとされている。特発性IONの発生頻度は成人10000-16000人あたり1人ほどと推定されており、頻度は上昇傾向にあるという意見もある。

教訓 ①腹臥位手術中は低血圧、貧血を避ける
    ②6時間以上の腹臥位を避ける
    ③特発性IONの危険因子がある場合は手術実施の可否を再検討する





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